年下青年と人妻の恋

岩波文庫版 テレビドラマでは一番視聴率を稼ぐ題材ともいえる人妻と独身青年の恋愛を描いた小説、これが「クレーブの奥方」である。 舞台は16世紀の貴族社会、クレーブ夫人と独身のヌムール公は宮廷の舞踏会で出会い、お互い激しく惹かれあう。夫人は美しく…

今こそ、青少年に読んでもらいたい

新潮文庫版 下村湖人作の有名長編小説です。太平洋戦争の始まった昭和16年に第一部の出版が、全五部までの長編シリーズ物です。 主人公の本田次郎は生まれてすぐに里子に出され、幼少時を乳母のお浜夫婦の下で育った。家に戻っても兄や弟となじめず、母のお…

今時の夫婦の見本を見るようだ

新潮文庫版 昔は、姦通といえば悲劇で終わるものが多く、小説でも既婚の貴婦人と独身の青年の道ならぬ恋は女性は貞操を守り女性が死ぬというものだった。この定型を破ったのがトルストイの「アンナ・カレーニナ」だ。 高級官僚カレーニンの妻アンナと、青年…

清純路線の少女の物語をどうぞ

新潮文庫版 オールコット作のこの物語、ときは南北戦争の真っ只中で、少々気位の高い16歳の長女メグと男の子みたいな15歳の次女ジョー、引っ込み思案の13歳の三女べス、こまっちゃくれた12歳の四女エミイが登場人物のマーチ家四姉妹が経験する1年間の出来事…

まだまだ童話を読んで見て

岩波文庫版 今日の童話は、貧しい庶民の物語です。飢饉で日々のパンも手に入らなくなった木こりの一家、夫婦は子どもたちを森に捨てようと話し合っています。「そんなこと、わしはごめんだ」と渋る夫に「ばかだねえ。そんなこと言ってたら、四人とも、うえ死…

有名童話をもう一度じっくりと読んで見ては

岩波文庫版 1697年のペローの童話「眠れる森の美女」は有名だ。もうひとつ、これと似たストーリーの童話「いばら姫」というのもある。こちらはグリム童話、大変似た部分が多いが終盤に違いが出て来る。ペローの方には人生訓めいたラストがあるので注目だ。 …

幻想的で不気味な短編小説

岩波文庫版 <君は広告に目を止める>という書き出し、その広告とは<若い歴史家求む。細心周到で几帳面、フランス語の知識要>というもの。それを見た君、フェリーぺは指定の住所を訪ねる。そこは暗闇の屋敷で、求人主は100歳を超えていそうな老婦人だった…

いまの若者に捧げたい

講談社文芸文庫版 目標を見失い、あるいは見つけれない若者が増えている。馬鹿な犯罪に手を染めても目立ちたいという今時の若者心理には困った現象で、もう一度原点に戻って、この本でやり直して欲しい。 「少年倶楽部」という少年向けの本があった。そこに…

幻想的なラテンアメリカ文学はいかが

岩波文庫版 作者はコルタサルという人、短編の名手として知られ、フランス留学中に会得したシュールレアリズムを取り入れた幻想的な作風になっている。 <どう話したものだろう。ぼくはと一人称ではじめるべきか、きみは、彼らとすべきか>で始まり、語り方…

定年退職したサラリーマンよ、一読したら

河出文庫版 一昔前の作家ともいう源氏鶏太、昭和のサラリーマンの小説を書き続けたもっとも忙しい作家の一人だった。「停年退職」はその彼の中期の代表作で、新聞にも連載された小説である。 矢沢章太郎は北陸の旧制高校を卒業して、東亜化学工業なる会社に…

今日のお勧め本はこれです

新潮文庫版 見ての通り、ホーソンの緋文字という小説は推理小説の要素をちりばめたアメリカ史の負の一面を鋭く描いた長編物です。 税関の2階で、赤いAの文字を刺繍した布と謎の文書を税関史の私が発見する。 そこには忌まわしい出来事が綴られていた。 物語…