今日のお勧め本はこれです

f:id:kuromekawa28:20150104155820p:plain 新潮文庫

  見ての通り、ホーソンの緋文字という小説は推理小説の要素をちりばめたアメリカ史の負の一面を鋭く描いた長編物です。

税関の2階で、赤いAの文字を刺繍した布と謎の文書を税関史の私が発見する。

そこには忌まわしい出来事が綴られていた。

物語は17世紀半ばのボストンから始まる。広場の「さらし台」に立たされていた彼女の名は、へスター・プリン、赤ん坊を抱き、衣装の胸には赤いAの文字が縫い付けられていた。Aというのは、不義の子を産んだ罪の印である。相手の男は誰かと問い詰められた彼女は、断固としてこう言い放つ。「絶対に言いません!」と。

人妻の身で他の男と関係したへスター、生まれた娘はパールと名付けられ、妖精のような子どもに育った。そこへ、へスターの夫だった老医師アーサー・ディムズデールなどが絡み、物語は心理劇の様相を帯びて行く。

ラストで描かれるのは老いたへスターの毅然とした姿、そして彼女が葬られた墓の描写である。<この物語はなるほど暗いけれども、絶えず燃え盛る影よりもなお暗い一点の光によってのみ際立ち、かつ救われているのであるー「黒地ニ赤キAノ文字」>

緋文字で始まり緋文字で終わる物語なのだ。