幻想的で不気味な短編小説

f:id:kuromekawa28:20150224142411j:plain岩波文庫

 <君は広告に目を止める>という書き出し、その広告とは<若い歴史家求む。細心周到で几帳面、フランス語の知識要>というもの。それを見た君、フェリーぺは指定の住所を訪ねる。そこは暗闇の屋敷で、求人主は100歳を超えていそうな老婦人だった。

 

婦人の名は、コンスエロといい60年前に夫を亡くし、夫が残した回想録を整理して出版できるようにして欲しいという依頼である。しかも彼女がいうには「この家で寝起きしていただくという条件です」とのことだった。

 

 部屋を与えられたフェリーぺはさっそく作業に取り掛かるが、その屋敷には夫人の姪だというアウラなる女性がいて、彼はアウラの魅力に取りつかれてしまう。

 

夜ごと、エロティックな夢にうなされるフェリーぺ、叔母に幽閉されているのではと疑った彼は、彼女の救出をもくろむが・・・。彼のベッドに現れるコンスエロ夫人ともアウラともつかぬ女性の幻影は、ときに若く、ときには老い、ときには骸骨のように目に穴が開いている。

 

 ラスト近くでは、私の部屋に来てとアウラに誘われたフェリーぺはついにエロティックな夢を実現させる。終わって唇を離すとそこには老いた女性の裸体が・・・。<あの子は戻ってくるわ、フェリーぺ。二人で力を合わせて彼女を連れ戻しましょう。しばらく、力を蓄えさせて。そうしたら、もう一度あの子をよみがえらせて見せるわ>と、アウラはいつまでも若くありたいと願う夫人の願望が生み出した影ではなかったのか。