まだまだ童話を読んで見て

f:id:kuromekawa28:20150309173022p:plain 岩波文庫

 今日の童話は、貧しい庶民の物語です。飢饉で日々のパンも手に入らなくなった木こりの一家、夫婦は子どもたちを森に捨てようと話し合っています。「そんなこと、わしはごめんだ」と渋る夫に「ばかだねえ。そんなこと言ってたら、四人とも、うえ死にしなきゃなりゃしない」とけしかける妻という設定です。

 

実母だった母を後にグリムが継母に変えたのは有名な話ですが、当時、口減らしのための子捨てや子殺しは前近代社会では実際に行われていました。貧しい家の子はたくましいものです。森に置き去りにされたヘンゼルとグレーテルも、自力で家に戻って来ます。前の晩に両親の会話を聞いていたヘンゼルの知恵で、家からの道々に白い小石を撒いて置いたのです。しばらくして兄と妹はまた森に置き去りにされます。

今度はパンくずを撒いたので、鳥に食べられ、戻れなくなってしまいました。ふたりが森の奥でパンの家を見つけ、悪い魔女につかまって・・・。とりわけ成長いちじるしいのがグレーテル、機転をきかせて魔女をパン窯の中に突き飛ばし兄を牢から救い出すグレーテル、帰路には鴨に川を渡してと交渉するなど、当初は泣くだけだったのとは格段の違いです。

一方、木こりは子どもたちを森に捨ててから<たのしい時はただの一刻もなく、それから、おかみさんは、死んでしまったのでした>。そこへ魔女の家から宝石を持ち帰った子どもたち<これで、苦労という苦労はすっかりおしまいになって、三人は、うれしいことばかりで、いっしょにくらしました>。自力で苦難を克服した経験が子どもを成長させるという話でもあります。

 

今の日本の世の中には、大変参考になるお話ではありませんか?

子離れと家族の在り方が問題を起こしている社会を何とかしたいお話でした。