今時の夫婦の見本を見るようだ

f:id:kuromekawa28:20150427112649j:plain新潮文庫

 昔は、姦通といえば悲劇で終わるものが多く、小説でも既婚の貴婦人と独身の青年の道ならぬ恋は女性は貞操を守り女性が死ぬというものだった。この定型を破ったのがトルストイの「アンナ・カレーニナ」だ。

 

高級官僚カレーニンの妻アンナと、青年士官ヴロンスキーはモスクワ駅で出会い、お互いに強く惹かれあう。幼い息子の母であるアンナは、最初はヴロンスキーの求愛を拒んだが、二人の仲は進展しアンナは夫にすべてを打ち明ける。「もうあなたの妻でいることはできません」と、宣告された夫の決断は決闘でも離婚でもなく、黙殺だった。

 

だが、やがてアンナはヴロンスキーの子どもを出産、ヴロンスキーは退役し二人はすべてを捨てて外国へ出奔する。ロシアに戻り、田舎で新しい生活をはじめたアンナとヴロンスキーだったが、幸せは長く続かなかった。二人にとって田舎暮らしは退屈であり、気持ちにすれ違いが出始めたのだ。<あの人はほかの女を愛しているんだわ>と考えるアンナ、<いやはや!また愛情談義か>と顔をしかめるヴロンスキーである。ついに思いつめたアンナは鉄道に身を投げて・・・。一方で、ヴロンスキーに失恋したキチイと地方領主のリョーブィンとの平凡な恋愛と結婚も描かれている。

 

ラストはリョーブィンの述懐である。宗教と戦争の問題で悩んでいた彼は、妻子が無事でいることの幸せを噛みしめて考える。おれの生活は<疑いもなく善の意義をもっている><おれはそれを自分の生活に与えることができるのだ!>

 

平凡なのが一番という教訓なのか、例え不倫相手といっしょになろうが・・・。