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これを中国人はどう見る?

f:id:kuromekawa28:20160312162807j:plain新潮文庫

 パール・バックのあの有名な大河小説、学生たちへの推薦書ともいうべき物語だったが現代人はどのように感じるだろうか。否、今の日本人こそどう思うのか興味が深い。

 

貧農から地主までに成り上がった一代目、父が残した財産を元手にそれぞれ勝手な生き方を選ぶ二代目、軍人として出世した父への反発から自由な道を求める三代目と、辛亥革命前後の中国を舞台に一族の生き様を描いた長編小説である。

 

 男女関係のケーススタディとして興味深い第1部と第2部の始まりから、第3部は今の日本人の若者にも当てはまる内容かも知れない。主人公の王龍は貧しさゆえに女奴隷だった阿蘭をもらい受けて結婚した。妻の才覚のおかげで財をなしたくせに、強権的で第二夫人にうつつを抜かす。三男の王虎は家を出て武将となるが、好きな女を父に奪われたことで女嫌いとなり、放蕩の末に一度に2人の妻をめとる。粗野な祖父、血の気の多い父と比べて、その次の王淵はぐっと軟弱な草食系の男子で、戦争が嫌いで農業が好きという人物、留学先のアメリカから帰国した後、いとこの誘いで革命軍に加わったりするが悩んでいるばかり、そんな王淵の前に現れたのが美人で清楚な医師を志す女性・美齢だった。

 

「今、僕がしたのは外国の習慣です。あなたが、いやなら・・・」と、これは王淵が美齢にキスをしようとした場面である。言い訳する王淵を美齢はさえぎる。

「外国の習慣でも、悪いことばかりじゃありませんわ!」舞い上がる王淵、<いったい、さっき、おれは何を恐れていたのだろう? /  「僕たち二人は」と彼は言った。「僕たち二人は・・・僕たちは、何も恐れる必要がないんだ」>。このとき父は危篤で、王淵は土地を受け継いで農業に生きることに憧れと恐れを抱いていたのだ。

 

 その恐れが、この一件で氷解したようだ。あぁ、恋愛の勝利とはかくも強い人間をつくるのか、愛は何ものにも勝るという例でした。