清純路線の少女の物語をどうぞ

f:id:kuromekawa28:20150316093208j:plain新潮文庫

 オールコット作のこの物語、ときは南北戦争の真っ只中で、少々気位の高い16歳の長女メグと男の子みたいな15歳の次女ジョー、引っ込み思案の13歳の三女べス、こまっちゃくれた12歳の四女エミイが登場人物のマーチ家四姉妹が経験する1年間の出来事が描かれている。

 

隣の屋敷のローリイと姉妹の出会い、その祖父ローレンス氏からべスに贈られたピアノや舞踏会に招かれたメグの後悔、戦地で病に倒れた父と父の元に赴く母のために自分の髪を売ってお金をつくるジョー、さらには母の留守中に猩紅熱でこん睡状態になるべスなどいろいろなことが起こる。

 

べスの病気が回復し、父母も戻って迎えた翌年のクリスマスは幸せな一家があることを描いた後で語り手は<メグにジョーに、べスとエミイがこうして一団となったところで幕が下りた。 / さて、この幕が再び上げられるかどうかは、ひとえに、この家庭劇「少女時代」の第一幕を、観衆がどう迎えるかによるのである>読者に拍手を強要するような幕引きだ。物語は「天路歴程」という本をガイドにして巡礼ごっこをしようという母の提案から始まっていたのだ。「巡礼ごっこというのは、結局わたしたちが良い娘になろうとする努力の別名ですものね」「天路歴程」というのは宗教色の濃い17世紀のピューリタン文学、姉妹が経験する幾多の試練は「巡礼ごっこ」という訳だ。