同じ作家とは思えない、この対極にある作品

f:id:kuromekawa28:20150707172048j:plain新潮文庫

 作家はトルーマン・カポーティという人、これが代表作とのことだがあの有名な映画化作品「ティファニーで朝食を」という作品も彼の作品なのだ。

 

1959年11月、カンザス州ホルカム村で一家4人が惨殺された。その4人とは、大農場主のクラッター氏、妻のボニー、娘ナンシー、息子ケニヨンである。クラッター氏は宗教的な禁忌を守る人物で、一家に殺害される理由は見当たらない。全米を震撼させた実際の事件を取材し、資料の収集とインタビューに作者が6年近くをかけた作品である。ノンフィクション・ノベルの傑作とされ、また、一時流行したニュージャーナリズムの端緒を開くことにもなった。

一家の日常を1人ずつ掘り下げる一方、作者は2人の若者の動向を追う。ペリーとディックが事件の犯人である。被害者一家とは何の接点もない2人だったが、捜査官のデューイのもとにある人物からの密告が寄せられ・・・。

後半で明らかになる容疑者2人の成育歴と事件に至る経緯、とりわけペリーの悲惨な少年時代は目をおおうほどのものだった。しかし、有罪判決が下り、2人の死刑は執行される。ラストは絞首刑の現場に立ち会った捜査官デューイが回想する1年前のシーンである。

ホルカム村の墓地を訪れたデューイは、殺された娘のナンシーの親友で第一発見者だったスーザンに出会う。ゆかりの人の消息を語り、屈託無く笑って去るスーザンだ。<やがて、デューイも家路につき、木立に向かって歩を進め、その陰へと入っていった。あとには、果てしない空と、小麦畑をなびかせて渡っていく風のささやきだけが残された>。美しい自然描写で終わる。事件を描いた後の癒しとも思える作品のラストシーンのようだ。